鍋は好きだが、吹きこぼれが嫌いだ
冬の鍋料理は最高だ。材料を切って放り込むだけ。洗い物は鍋ひとつ。栄養バランスも勝手に整う。独身時代から数えて20年以上、鍋は俺の主力メニューであり続けている。
だが、ひとつだけ嫌いなことがある。吹きこぼれ。
食卓でカセットコンロに土鍋を置いて、家族で囲む。いい感じにグツグツしてきた頃、少し目を離す。子供の取り皿に具材をよそう。ビールを注ぐ。——その瞬間、ジュワッという音とともに泡が蓋の隙間から溢れ出し、コンロの周りがべちゃべちゃになる。
慌てて蓋を開ける。火を弱める。テーブルを拭く。せっかくの「楽しい鍋の時間」が「吹きこぼれとの戦い」になる。
これが嫌で、鍋の日はずっと火加減を気にしている自分がいた。リラックスして食べたいのに、コンロの前から離れられない。
「吹きこぼれにくい土鍋」という発想
以前の土鍋が割れて買い替えを探していた時、「吹きこぼれにくい」というキーワードに引っかかった。
リビングの「ニュー宴」シリーズ。フチが高く設計されていて、煮汁が溢れにくい構造になっている。深型のフォルムで容量もたっぷり。見た目は白と黒のツートンカラーで、昔ながらの土鍋っぽさがありつつモダン。
正直、「吹きこぼれにくい」程度の差で何が変わるんだ、と半信半疑だった。火加減さえ気をつければ普通の土鍋でもいいだろう、と。
結論から言う。全然違った。
なぜ吹きこぼれにくいのか
この土鍋の構造的な特徴は3つ。
1. フチが高い
一般的な土鍋よりもフチが数センチ高い。この「たった数センチ」が決定的な差を生む。煮汁が沸騰して泡立っても、フチの高さが堤防のように機能する。泡がフチを越える前に消える。
2. 深型の形状
底が丸みを帯びた深型で、対流が起きやすい。お湯が鍋の中でぐるぐる回るので、局所的に沸騰して泡が一気に膨れ上がるという現象が起きにくい。均一に加熱されるから、煮汁の動きが穏やかになる。
3. 蓋の密閉度
蓋がしっかり本体にフィットする。隙間から蒸気が適度に抜けるので、蓋の下に圧力が溜まって一気に吹き出す、というパターンが起きにくい。
この3つの組み合わせで、中火でガンガン煮ても吹きこぼれない。もちろん「完全に吹きこぼれない」わけではないが、以前の土鍋と比べると体感で8割減。ほぼ気にしなくてよくなった。
鍋の夜が変わった
火加減を忘れられる
これが最大の変化。
以前は鍋の間中、コンロの火力を気にしていた。強すぎないか、弱すぎないか。蓋を開けるタイミング、閉めるタイミング。料理というより「監視業務」だった。
ニュー宴に変えてからは、中火にセットしたらあとは放置。家族と会話しながら、ビールを飲みながら、テレビを見ながら。鍋が勝手にいい感じに煮える。火加減のストレスから解放されるだけで、食卓の空気がこんなに変わるのかと驚いた。
土鍋ご飯が炊ける
鍋料理だけではない。この土鍋はご飯を炊くのにも最適だった。
深型で対流が良いから、米がムラなく加熱される。そして何より、吹きこぼれにくいから安心して炊ける。普通の土鍋で米を炊くと、沸騰した瞬間に蓋から泡がブワッと溢れてコンロが大惨事になる。ニュー宴ならフチの高さが溢れを防いでくれる。
中火で10分、弱火で15分、蒸らし10分。たったこれだけで、炊飯器より明らかに旨い飯が炊ける。遠赤外線効果でふっくら、おこげもいい具合につく。納品前の深夜作業で疲れ果てた時、土鍋で炊いた白米に卵をかけて食べる。これが最高の「ご褒美飯」になっている。
おでんが格段に旨くなった
深型の真価が発揮されるのはおでん。
8号サイズで容量2.2L。大根、卵、こんにゃく、ちくわ、はんぺん。具材を縦に入れても余裕で収まる。深さがあるから出汁がたっぷり入り、具材が完全に浸かる。
土鍋の保温力で出汁の温度がゆっくり下がるから、冷める過程で具材に味が染み込む。ステンレス鍋で作るおでんとは、大根の味の入り方が全然違う。芯までしっかり染みる。
休日の昼に仕込んで夕方に食べるおでん。これだけで冬の週末が完成する。
サイズ選びの話
ニュー宴には6号・7号・8号・9号がある。
8号(3〜4人用)がベストだと断言する。
6号・7号は小さすぎる。具材を追加投入するスペースがない。鍋は途中で「もう1回分」を作りたくなるものだが、小さい鍋だとそれができない。
9号は大きすぎる。カセットコンロの上で安定感が悪くなるし、収納場所を取る。食卓のスペースも圧迫する。
8号なら、2人でたっぷり食べるにも、4人で囲むにもちょうどいい。余った鍋を翌朝の雑炊にする時も、ちょうどいい量が残る。
手入れと注意点
土鍋には独特の手入れが必要。これを怠るとひび割れや匂い移りの原因になる。
使い始めの「目止め」は必須。米のとぎ汁を入れて弱火で20分煮る。これで土鍋の細かい気孔が埋まり、水漏れやひび割れを防げる。面倒だが最初の1回だけ。
急激な温度変化を避ける。熱い状態で冷水をかけない。使い終わったら自然に冷ましてから洗う。土鍋が割れる原因の大半はこの「急冷」。
洗剤を長時間つけない。土鍋は吸水性があるので、洗剤を入れたまま放置すると匂いが染み込む。スポンジでサッと洗って、すぐすすぐ。
しっかり乾かす。洗った後は伏せずに、底を上にして乾かす。湿ったまま収納するとカビの原因になる。
デメリットも正直に
直火専用。IH非対応。IHコンロの家庭ではカセットコンロが必要。俺はカセットコンロ派なので問題ないが、IH対応を求めるなら別の選択肢を探す必要がある。
重い。陶器だから当然だが、8号サイズだと中身を入れたら相当な重量になる。食卓への移動は両手で慎重に。子供には持たせない方がいい。
収納場所を取る。丸くて大きいので、キッチンの棚に収まりにくい。俺はシンク下の引き出しに鍋敷きと一緒に収納しているが、場所の確保は必要。
割れるリスクはある。いくら丈夫でも陶器は陶器。落としたら割れる。前の土鍋はシンクでぶつけて縁が欠けた。丁寧に扱う覚悟は必要。
まとめ:「吹きこぼれない」は正義
土鍋に数千円も出す必要があるのか。100均にも土鍋は売っている。
だが、「吹きこぼれにくい」という一点だけで、鍋料理の体験が根本的に変わる。火加減を気にしない。コンロを拭かない。食卓の会話に集中できる。この快適さは、安い土鍋では買えない。
ニュー宴 8号。3〜4人家族にジャストサイズ。鍋にもご飯にもおでんにも使える万能選手。白黒のツートンカラーは食卓に置いても様になる。
冬の鍋はもちろん、春先の湯豆腐、夏の冷やし鍋、秋のきのこ鍋。四季を通じて土鍋を使う生活が、この1台で始まる。
