ケーブルに金を出す気になるまで
USB-Cケーブルは100均で買うものだと思っていた。
どうせ消耗品だろう。どれも同じだろう。そう思って100均のケーブルを半年ごとに買い替える生活を5年以上続けた。断線して買い替える度に「100円だから仕方ない」と自分を納得させていた。
転機は納品直前のトラブルだった。外付けSSDからMacBook Proにデータ転送中、ケーブルの接触不良で転送が途中停止した。50GBの素材を最初からやり直し。クライアントとの打ち合わせまで残り2時間。あの冷や汗は忘れない。
それ以来、ケーブルだけはまともなものを使うと決めた。
240W対応の意味
「240W対応」と言われてもピンと来ない人が多いと思う。俺もそうだった。
USB-Cケーブルには対応ワット数がある。安いケーブルは60Wまで、ちょっと良いのが100W、そして最上位が240W。ケーブルがボトルネックになって充電が遅い、というのは笑えない話だが実際によくある。
俺はCIO NovaPort TRIO II(140W)と組み合わせて使っている。充電器が140W出せても、ケーブルが100Wまでしか通さなければ意味がない。240W対応なら、今の140Wはもちろん、将来さらに高出力の充電器に買い替えても使い続けられる。
データ転送もUSB 2.0(480Mbps)対応。正直、USB 3.0対応なら嬉しかったが、充電用途がメインなので割り切っている。データ転送用は別にThunderboltケーブルを使っている。
スパイラル形状が思った以上に便利
このケーブルの最大の特徴はスパイラル(コイル)形状。電話のコードみたいにクルクル巻かれている。
最初は「見た目がちょっと...」と思った。ストレートに見える。だが使い始めると、もう戻れない。
カバンの中で絡まらない。これが最大のメリット。撮影機材バッグの中には、カメラのストラップ、マイクケーブル、HDMIケーブル、イヤホンケーブル...紐状の。のが大量に入っている。ストレートのUSBケーブルを放り込むと、翌日取り出す時に他のケーブルと絡み合って地獄になる。スパイラルケーブルは自然にまとまっているから、サッと取り出せる。
デスクでも散らからない。ストレートケーブルはデスクの上でだらしなく蛇行する。スパイラルは必要な長さだけ伸びて、残りは勝手に縮む。デスクの上が視覚的にスッキリする。動画編集は集中力の勝負だから、視界のノイズは少ない方がいい。
マグネット吸着の地味な恩恵
ケーブルの先端にマグネットが内蔵されていて、使わない時はコネクタ同士がくっつく。
「別にそんな機能いらなくない?」と思うだろう。俺もそう思っていた。
だが実際に使うと、デスクからケーブルが落ちない。MacBookから外したケーブルの先端が、もう一方の先端とくっついてデスクの上に留まる。以前はケーブルを外すと重力でデスクの裏側に落ちていき、拾うために屈む...という小さなストレスがあった。マグネットのおかげでそれがなくなった。
撮影バッグに入れる時も、マグネットで先端がまとまるから、コネクタが他の機材にぶつかって傷を付ける心配が減る。
シリコン素材の感触
ケーブルの被覆素材は大きく分けて3種類ある:PVC(ビニール)、ナイロン編み、シリコン。
PUCは安いが硬い。冬場は特に硬くなって取り回しが悪い。100均のケーブルはほぼこれ。
ナイロン編みは見た目が良い。高級感がある。だが意外と硬くて、曲げたい方向に曲がらない。デスク上で使う分にはいいが、カバンの中では嵩張る。
シリコンは柔らかくて、手触りがサラサラしている。汚れが付きにくく、付いても拭けば落ちる。曲げても癖がつかない。撮影現場のように「サッと出してサッとしまう」場面では、柔軟性が正義。
半年使った耐久性
ケーブルは耐久性が全て。見た目やスペックが良くても、半年で断線するなら100均と変わらない。
(��入から半年、毎日の充電+週2〜3回の持ち出しという使い方で、現状劣化の兆候なし。コネクタのガタつきもない。スパイラルの弾力も購入時と変わらない。
1点だけ注意。スパイラル形状なので、伸ばした状態で引っ張り続けるとスパイラルが伸びきる可能性がある。デスクとMacBookの距離が離れている場合は、伸ばしきらない余裕のある長さかどうかを購入前に確認した方がいい。
たかがケーブル、されどケーブル
USB-Cケーブルに2,000円。高いと思う人の気持ちはわかる。
だが100均ケーブルを半年ごとに買い替えるコスト、断線で失う時間、カバンの中で絡まるストレス、デスクから落ちるイライラ。それらが消えることの価値は、2,000円をはるかに超える。
仕事道具のケーブルは、安心を買うもの。40代になってようやくそれに気づいた。
