コカイン
南米原産のコカの葉から抽出される強力な中枢神経刺激薬。日本では麻薬及び向精神薬取締法で厳しく規制。
概要
コカインとは、南米アンデス地方原産のコカの葉(エリスロキシルム・コカ)から抽出・精製される中枢神経刺激薬である。化学名はベンゾイルメチルエクゴニン。白色の結晶性粉末として流通し、鼻腔吸引・注射・喫煙などの方法で摂取される。強烈な多幸感と覚醒作用をもたらすが、作用時間は比較的短く、急速な精神的依存を形成する。日本では麻薬及び向精神薬取締法により、輸入・製造・所持・使用のすべてが厳しく禁止されている。
歴史と製造
コカの葉の利用は紀元前にまで遡り、アンデスの先住民は高地での労働における疲労軽減や宗教儀式にコカの葉を噛む習慣を持っていた。1860年にドイツの化学者アルベルト・ニーマンがコカインの単離に成功し、その後は局所麻酔薬として医療に利用された時期もあった。しかし依存性の深刻さが認識されるに従い、各国で規制が強化されていった。
現在のコカインの主要生産地はコロンビア、ペルー、ボリビアの三カ国に集中している。コカの葉を化学処理してコカペーストを抽出し、さらに精製してコカイン塩酸塩(粉末コカイン)を得る。このコカイン塩酸塩を重曹と水で加熱処理したものが「クラックコカイン」であり、喫煙摂取が可能なため即効性が高く、より深刻な依存を引き起こす。
日本における流通と取締り
日本におけるコカインの流通規模は覚醒剤や大麻と比較すると限定的であるが、近年は増加傾向にある。密輸ルートは中南米から直接持ち込まれるケースのほか、欧州や東南アジアを経由する迂回ルートも確認されている。運搬方法としては、旅行者の荷物への隠匿、国際郵便を利用した小口密輸、船舶の貨物に紛れ込ませる大口密輸など多岐にわたる。
麻薬及び向精神薬取締法における罰則は重く、営利目的の輸入の場合は無期または三年以上の懲役に加え、一千万円以下の罰金が科される場合がある。末端価格は1グラムあたり数万円とされ、覚醒剤と比較しても高価な部類に属する。この高価格帯ゆえに、日本では富裕層や芸能関係者の間での使用が報道されるケースが目立つ。
裏社会との関係
コカインの密輸・密売は国際的な犯罪組織の主要な資金源となっている。日本国内においても、暴力団や半グレ集団がコカインの流通に関与しているとされ、密売による利益は組織の運営資金に充てられる。近年はSNSやダークウェブを利用した非対面型の取引も増加しており、従来の組織的な密売網とは異なる流通形態が出現している。
薬物犯罪の国際化に伴い、日本の捜査機関も各国との連携を強化しており、コントロールドデリバリー(監視下配達)などの捜査手法が積極的に活用されている。