当たり屋
故意に交通事故を偽装して保険金や示談金を騙し取る犯罪手口。暴力団の資金源としても利用され、組織的に行われることが多い。
概要
当たり屋(あたりや)とは、故意に自動車との接触事故を演出し、被害者を装って相手方の運転者から示談金や保険金を騙し取る犯罪行為、またはそれを行う者の俗称である。道路交通法違反、詐欺罪、保険金詐欺などに該当する重大犯罪であり、暴力団の**シノギ(資金獲得手段)**のひとつとしても知られている。
語源
「当たり屋」という名称は、自ら車に「当たりに行く」ことに由来する。元々は博打で運良く当たりを引く者を指す言葉であったが、転じて故意に事故を起こして金銭を得る者を指すようになった。
主な手口
当たり屋の手口は時代とともに巧妙化しているが、代表的なものは以下の通りである。
歩行者型
最も古典的な手口。低速で走行する自動車の前に飛び出し、あるいは車体に自ら接触して「はねられた」と主張する。打撲や捻挫などの軽傷を負ったふりをし、その場で示談金を要求する。
自転車型
自転車に乗って走行中の自動車に接触し、転倒して負傷を装う。自転車の修理費用に加えて治療費・休業補償を請求する。
車両型(おかま型)
自動車同士の事故を偽装する手口。急ブレーキを踏んで後続車に追突させ、「むち打ち症」などの診断書を取得して保険金を請求する。信号の変わり目や交差点付近で行われることが多い。
当て逃げ偽装型
駐車場などで自ら車体に傷をつけ、「当て逃げされた」と申告して車両保険を請求する手口。
組織的犯行
当たり屋は個人による小規模な犯行もあるが、暴力団やその関連組織が組織的に行うケースが社会問題となってきた。組織的犯行の場合、以下のような役割分担がなされる。
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| 実行犯 | 実際に事故を演じる者 |
| 示談交渉役 | 被害者として相手方と交渉する者(しばしば威圧的) |
| 医師・整骨院 | 虚偽の診断書を発行する協力者 |
| 保険請求役 | 保険会社への請求手続きを担当 |
| 元締め | 上納金を受け取る組織の上層部 |
組織的な当たり屋グループは、同一人物が短期間に複数の事故を起こすことで発覚するケースが多い。
法的対応
当たり屋行為は以下の法律に抵触する。
- 詐欺罪(刑法第246条): 人を欺いて財物を交付させた場合。10年以下の懲役。
- 保険業法違反: 虚偽の保険金請求。
- 道路交通法違反: 故意に交通事故を起こす行為。
- 恐喝罪(刑法第249条): 示談交渉で脅迫を伴う場合。10年以下の懲役。
保険会社は「SIU(特別調査部門)」を設置し、不正請求の調査・防止に取り組んでいる。同一人物による頻繁な事故歴や、不自然な事故状況はデータベースで照合され、詐欺の発覚につながる。
対策
当たり屋被害を防ぐためには、以下の対策が有効とされている。
- ドライブレコーダーの設置: 事故の客観的証拠を記録する最も効果的な手段
- その場での示談に応じない: 警察への通報を最優先する
- 目撃者の確保: 周囲の通行人に証言を求める
- 保険会社への速やかな連絡: 専門家による事故状況の検証を依頼する
近年はドライブレコーダーの普及により、当たり屋の犯行が映像で記録されるケースが増え、従来型の手口は減少傾向にあるとされる。