チョボイチ
サイコロ1個を使う伝統的な賭博。博徒の世界で広く親しまれた代表的な賭け事の一つ。
概要
チョボイチとは、サイコロ1個を用いて行う日本の伝統的な賭博である。「丁半博打」と並び、博徒の世界で最も広く親しまれた賭け事の一つとして知られる。名称の「チョボ」はサイコロの目に付された点(チョボ)に由来し、「イチ」は1個のサイコロを意味する。その単純明快なルールゆえに、賭場では初心者から熟練の博徒まで幅広く遊ばれた。
ルールと遊び方
チョボイチの基本的なルールは極めてシンプルである。親がサイコロ1個を茶碗や壺の中で振り、出た目を当てるという形式を取る。張り手(賭ける側)は1から6までの目のいずれかに賭け金を置く。的中すれば賭け金の数倍が払い戻され、外れれば没収となる。
配当は賭場によって異なるが、一般的には的中時に4倍から5倍の払い戻しが行われた。確率上は6分の1であるため、胴元(親)側に有利な設計となっている。この差額が「寺銭」として胴元の収益となり、賭場の運営資金に充てられた。
歴史と背景
チョボイチの起源は江戸時代にまで遡るとされる。当時、街道筋の宿場町や祭礼の場において、博徒たちが賭場を開帳し、旅人や地元の者を相手に広く行われていた。丁半博打が二者択一の勝負であるのに対し、チョボイチは6つの目から選ぶため、一撃で大きな配当を得られる点が魅力とされた。
明治以降、賭博取締りが厳格化する中でも、チョボイチは地下に潜りながら脈々と続けられた。特に博徒系の組織においては、賭場の開帳が重要な資金源であり、チョボイチはその花形種目の一つであった。戦後の混乱期にも盛んに行われ、闇市周辺の賭場では日常的な光景であったという。
賭場における位置づけ
賭場(鉄火場)において、チョボイチは「軽い博打」として位置づけられることが多かった。丁半博打のような本格的な勝負の合間に、息抜きや景気づけとして楽しまれた側面もある。一方で、配当倍率の高さから一攫千金を狙う者も多く、短時間で大金が動く場面も珍しくなかった。
胴元にとっては、寺銭の取り分が比較的大きい種目であるため、収益性の高い博打として重宝された。また、ルールが単純なため見張りの目を気にしながらでも素早く勝負がつく点も、非合法の賭場では大きな利点であった。
現代における扱い
現代の日本において、チョボイチを含む賭博行為は刑法第185条(賭博罪)および第186条(常習賭博罪・賭博場開張図利罪)により禁じられている。かつての賭場文化は映画や小説の中に描かれるのみとなり、実際に行われることはほぼなくなった。しかし、日本の裏社会の歴史を語る上で、チョボイチは博徒文化を象徴する存在として記憶されている。