語
用語
任侠映画
/にんきょうえいが/
ヤクザ・極道の世界を題材にした日本映画のジャンル。1960〜70年代に東映を中心に大量制作され、大衆文化としてのヤクザ像を確立した。
概要
任侠映画(にんきょうえいが)とは、ヤクザ・極道・侠客の世界を題材にした日本映画のジャンルである。「ヤクザ映画」「極道映画」とも呼ばれる。
1960〜70年代に東映を中心として大量に制作され、高倉健・鶴田浩二らの主演で一大ブームを巻き起こした。その後、実録路線では菅原文太が新たなスターとなった。現実のヤクザとは異なる「理想化された極道像」を大衆に浸透させた功罪の大きいジャンルである。
歴史
黎明期(1950年代)
戦後の日本映画界で、時代劇の衰退とともに「現代劇としてのアウトロー映画」が求められるようになった。股旅物(またたびもの:江戸時代の侠客を描いた時代劇)の現代版として、ヤクザ映画の原型が生まれた。
黄金期(1960〜70年代)
東映が「任侠路線」を確立し、毎月のように新作が公開された。この時期の作品の特徴は以下の通り。
- 義理と人情の葛藤: 組織の掟と個人の情の板挟み
- 忍耐と爆発: 理不尽に耐え続けた主人公が最後に立ち上がる
- 様式美: 盃事・仁義・殴り込みの美学的な描写
- 勧善懲悪: 主人公は「良いヤクザ」、敵は「悪いヤクザ」
代表作に「昭和残侠伝」シリーズ、「日本侠客伝」シリーズなどがある。
実録路線(1970年代〜)
深作欣二監督の「仁義なき戦い」(1973年)が転換点となった。従来の美化された任侠像を否定し、実在の抗争事件に基づくリアルな暴力描写で新たなヤクザ映画の潮流を作った。
現代(1990年代〜)
北野武(ビートたけし)の「その男、凶暴につき」「アウトレイジ」シリーズなど、従来の任侠映画の文法を解体・再構築した作品が国際的にも評価されている。
文化的影響
任侠映画は、日本社会におけるヤクザのイメージ形成に決定的な影響を与えた。「義理堅い」「筋を通す」「弱い者の味方」といったヤクザの肯定的イメージの多くは、映画を通じて作られたものである。