トバシ口座
他人名義で不正に開設・売買された銀行口座のこと。特殊詐欺やマネーロンダリングの資金受け皿として利用され、犯罪インフラの中核を成す。
概要
トバシ口座とは、他人名義で開設された銀行口座、あるいは正規の名義人から不正に買い取られた銀行口座を指す裏社会の用語である。「飛ばし」は本来、所有者の追跡を困難にする意味で使われ、口座の真の利用者と名義人が異なることで資金の流れを隠蔽する目的がある。特殊詐欺(オレオレ詐欺・振り込め詐欺など)の振込先として最も多用される犯罪ツールの一つであり、地下銀行によるマネーロンダリングにも不可欠な存在である。
歴史・由来
トバシ口座という呼称は、1990年代後半から2000年代にかけて急増した振り込め詐欺の社会問題化とともに広まった。当初は多重債務者やホームレスから数千円程度で口座を買い取る手口が主流であったが、次第に組織化が進み、留学生や技能実習生の帰国時に口座を買い取るケース、さらにはSNS上で「口座を作るだけで報酬がもらえる」と勧誘する手口へと変遷した。
2004年に「金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律」(本人確認法)が施行され、2008年には「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(犯収法)に統合・強化された。これにより口座開設時の本人確認が厳格化されたが、偽造身分証の精巧化やネットバンキングの普及により、完全な根絶には至っていない。
特徴
トバシ口座には以下のような特徴がある。
入手経路として、(1)多重債務者・生活困窮者からの買い取り、(2)SNSやインターネット掲示板での募集、(3)外国人労働者・留学生の帰国時口座の取得、(4)偽造身分証による新規開設、などが知られている。買取価格は口座の種類や金融機関によって異なるが、普通預金口座で数万円、ネットバンキング付きで十万円前後とされる。
利用形態としては、特殊詐欺における被害金の受け皿が最も多い。詐欺グループは複数のトバシ口座を短期間で使い捨てにし、入金後すぐにATMで現金を引き出すか、さらに別の口座へ転送する。一つの口座が凍結されても次の口座に切り替えることで、犯行の継続を可能にしている。
法的罰則について、口座を売却した側も犯収法違反として処罰の対象となる。口座の譲渡・売買は1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、業として行った場合は3年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金が科される。また、口座売買の勧誘行為自体も処罰対象である。
近年では、暗号資産(仮想通貨)の取引所口座や電子マネーアカウントもトバシ口座と同様の手法で売買されるケースが増加しており、犯罪インフラの多様化が指摘されている。
関連用語
- トバシ携帯 — 他人名義の携帯電話。トバシ口座とセットで詐欺に使われることが多い
- 地下銀行 — 非合法の国際送金システム。トバシ口座が資金の中継点として利用される
- 特殊詐欺 — トバシ口座を最も多用する犯罪類型
参考・注意事項
この記事は裏社会用語の解説を目的としており、犯罪行為を推奨・美化するものではありません。口座の売買・譲渡は犯罪収益移転防止法により厳しく処罰されます。不審な勧誘を受けた場合は、最寄りの警察署または金融機関に相談してください。